
盲目のピアニスト梯剛之(かけはしたかし)さんのホームコンサートに行って来ました。
中之条町の真澄さんの自宅でのピアノコンサートですが、梯さんのピアニストとしてのデビューの地でもあります。真澄さんが発掘してきて、中之条でデビューし、世界四大ピアノコンクールのロン・ティボーコンクールで1998年に準優勝。2000年のショパンピアノコンクールではワルシャワ市長省受賞。
いわゆる世界のトップアーティストですが、真澄さんの自宅のピアノ室で、おなじみの顔ぶれを50人前後集めてのプライベートコンサートという、およそ信じられない演奏会でした。
私はビデオ撮影の担当で、午前中のリハーサルから立ち会っていました。
曲目はモーツァルトの「キラキラ星変奏曲」、シューベルトのピアノソナタ13の「小ソナタ」、ベートーヴェンのピアノソナタ14「月光」。
マエストロの指の動きの美しさをビデオに収めようと、事前に楽譜を読んで、両手の指の動く範囲を想定して、手持ちで撮影しました。
午前中の練習の時には随分ナーバスになっていたので心配していましたが、わずかばかりの事前練習でピアノのクセを把握してしまうのだそうです。
本番で「全然レベルが違う世界の人なんだな」と感心したのは、なんというのか、練習に練習を重ねて演奏を披露する苦しさなど微塵もなく、どこを切り取っても心地よい美しい響きを奏でていました。
シューベルトってこんなに艶っぽくて色っぽい音楽だったのか、今まで堅苦しいイメージが払拭されました。ベートーベンの「月光」に至っては圧巻で、第一楽章の入り方の柔らかくスムーズな導入から、第三楽章のフォルテッシモの響きの美しさなど壮絶でした。
真澄さんの家のKAWAIピアノは何回も聞いていますし、弾いてみたこともありますが、こんなに美しく色っぽい音が出るのか!と感心しました。梯さんがウィーンで勉強していたこともあるのか、カワイのピアノと言うよりベーゼンドルファーのような音に聞こえ、これがウィーンの音なんだなと酔いしれました。
コンサートの後ではお茶を飲みながらいろいろ話をしました。駄洒落好きで話し上手な人で、南米でのコンサートの話題では皆が大笑いしました。
混浴の温泉で女性が入ってきて「目のやり場に困りました・・・・・・僕は盲目なんですけどね。」と皆を笑わせていました。
南米の片田舎でコンサートをしたとき、ピアノの調律をするのがその土地の大工さんで、これがまた大雑把な調整をするから、思い切り弾きにくいピアノだったそうですが、「これも経験の一つ」と演奏を楽しんだそうです。
世界のトップレベルですから「すげぇ~」なんて見世物の領域ではなく、さりげなく、いつの間にか心地よくうっとりさせて、曲の終わりが近づくにつれて「もう終わっちゃう」と寂しさがこみ上げるすばらしい時を楽しんできました。