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コクリコ

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 「まあ、あれだよなぁ、性衝動というのは生物の偉大なるエネルギーだよなぁ。」
 渡辺淳一著の「君も雛罌粟(コクリコ)われも雛罌粟(コクリコ)―与謝野鉄幹・晶子夫妻の生涯」を読んだ先輩がしみじみつぶやいていました。
 若かりし頃マルクスに傾倒し、挫折し、世の中脳みその理論よりスケベ心で動いているときがついた人なので、マルクスよりもフロイトの見解から物事を考えるようになったそうです。

 「嗚呼皐月 仏蘭西の野は火の色す 君も雛罌粟(コクリコ)われも雛罌粟(コクリコ)」
 与謝野晶子の稼ぎでフランスへ洋行した鉄幹を追いかけて、シベリア鉄道でフランスへ行った与謝野晶子の歌です。

 私は10年ほど前に図書館でこの本を読みましたが、女房の尻の下に敷かれていたように見えて意外とナルシストだった与謝野鉄幹。女癖の悪さなどは当時の物書きには当たり前のようなもの?
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 明治末期、大正から昭和にかけての作家は女癖の悪いのばかり顔をそろえていますが、今と違って姦通罪なんて法律があった時代に下半身の要求に忠実に行動していたのが売れっ子作家。
 太宰治なんか心中未遂事件や玉川上水の心中本懐で何人も女性を殺していますし、島崎藤村は姪を妊娠させてフランスに逃亡したし、北原白秋なんか姦通罪で逮捕されています。谷崎潤一郎と佐藤春夫の間では妻譲渡問題が起きています。
 女性だって負けていません。「芸術は爆発だ!」の岡本太郎の母の岡本かの子なんか夫と自分の愛人の3人で同居生活していますし、1996年まで生きていた宇野千代なんか東郷青児はじめ幾多の芸術家と結婚や浮名を流しています。

 雛罌粟(コクリコ)とはフランス語でヒナゲシ(coquelicot)のことで、ポピー、アマポーラ、虞美人草なんて呼び方もあります。
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 虞美人草と言う呼び方に着目すると、虞美人草と言えば劉邦に追い詰められた項羽が「四面楚歌」の中で愛する虞美人を切り殺し、その後にはえた赤い花で、虞美人の血の色をたたえていると言われています。
 「君も雛罌粟(コクリコ)われも雛罌粟(コクリコ)」と与謝野夫妻は四面楚歌を感じていたのだろうか?

 夏目漱石の小説虞美人草には帝大出のエリート小野に、気の強い美女の藤尾が「ホホホ私は清姫のように追っ懸けますよ」「蛇になるには、少し年が老け過ぎていますかしら」と詰め寄るシーンが出てきます。この美女、最後はふられてそのショックのあまり憤死してしまうのですが・・・


 さて、パリに行った夫を追いかけて与謝野晶子がウラジオストクからシベリア鉄道に乗ったのが明治年。1912年なので社会主義革命の5年前。
 2年ほど前にウラジオストクに「与謝野晶子記念文学会」が発足し、極東大学の敷地に歌碑が立っています。
 「金の車をきしらせよ。颶風(ぐふう=つむじ風)の羽は東よりいざ、こころよく我を追ヘ。黄泉(よみ=冥土、幽界)の底まで、泣きながら、頼む男を尋ねたる、その昔にもやる劣る。晶子や物に狂うらん、燃ゆる我が火を抱きながら、天がけりゆく、西へ行く、巴里の君へ逢ひに行く。」